最高裁判所第一小法廷 昭和23年(れ)702号 判決 1948年10月28日
主文
本件上告を棄却する。
理由
辯護人正田光治上告趣意第二點について。
しかし、公判期日の指定は文書でなければならぬという法令の規定は別段存在しないから、裁判長は適宜の方法をもって期日の指定をしても差支えない。(所論のように記録中に「本件公判期日ヲ變更シ昭和二十二年十一月十二日午前十時ト定ム昭和二十二年十月二十八日裁判長判事」というゴム判による記載はあるが、裁判長の署名も捺印もない點から見ればこの記載をもって十一月十二日に期日の指定があったものと速斷することを得ない。)そして被告人両名と辯護人両名に對する公判期日召喚状の送達報告書には、いづれも「一、封書一通但昭和二十二年十一月十三日午前十時公判期日召喚状在中」と記載されているし、又は公判調書によれば、現に同日被告人両名と辯護人村沢義二郎が出廷して、公判が開かれている點から見れば公判期日の指定は十一月十三日であったことが理解できる。されば右公判期日の指定も辯護人塚本助次郎に對する召喚も適法のものであって、しかもその召喚状が同人に適法に送達されたものと認むべきことは召喚状送達書によって肯認することができるから、同辯護人が右公判期日に出廷しなかったのは同辯護人の個人的怠慢又は差支によるものであって所論のごとく期日指定に關する手續の違法に基くものとはいえない。そして本件は辯護人の立會なくして審理し得る場合であるばかりでなく、右期日に出廷した辯護人村沢義二郎は被告人と相被告人の両名の辯護人であることは記録上明らかなところであるから、右期日に辯護人塚本助次郎が出廷しないのに結審をしたからといって原審が不法に辯護権の行使を制限したものだとはいえない。論旨は理由がない。(その他の判決理由は省略する。)
よって刑訴第四四六條に從い主文のとおり判決する、
この判決は裁判官全員の一致した意見である。
(裁判長裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野毅 裁判官 齋藤悠輔 裁判官 岩松三郎)